探究学習×企業連携|全国5つの成功事例

目次

地元企業と商品開発に挑戦(新潟県・公立高校)

課題意識から始まった探究の旅

「地域に貢献できる学びを、生徒の手で形にしたい」──そんな想いから、新潟県のある公立高校で、地元食品メーカーと連携した探究学習プロジェクトがスタートしました。商業科の生徒たちはまず、自分たちの住む地域が抱える課題を洗い出すことから始めました。

見えてきたのは、「若者の地元離れ」や「伝統食文化の継承不足」といった問題。生徒たちは、「若者にも受け入れられる、現代風にアレンジした伝統食品をつくろう」とテーマを設定。食品メーカーの協力のもと、商品の企画から試作、マーケティング調査、パッケージデザインまでを自ら手がけました。

このプロセスでは、実社会で使われているビジネスモデルキャンバスやSWOT分析などのフレームワークも取り入れ、企業の担当者からフィードバックを受けながら改善を重ねました。探究学習の枠を超えた「実務体験」となったのです。

成果と波及効果

完成した商品は、地元の道の駅や高校の文化祭で実際に販売され、予想を上回る売上を記録。地域メディアにも取り上げられ、「高校生が地元の未来をつくる」と話題になりました。

さらに、学校の商業科への志望者数が前年より20%増加。地域とのつながりを学びに転換するこの取り組みは、「将来、地元で働く」ことへのポジティブな意識を育む機会にもなりました。

企業側にとっても、「次世代と向き合うCSRのあり方」を見直す契機になったといいます。教育と産業、双方にメリットのある企業連携型探究学習の好例と言えるでしょう。

IT企業とのプログラミング探究(東京都・私立中高一貫校)

「教科横断×DX」がキーワード

東京都内のある中高一貫校では、ICT教育に力を入れる一環として、国内大手のIT企業と連携した探究学習プログラムを導入しました。テーマは「地域の課題を解決するWebアプリを開発すること」。中学3年から高校2年までの希望者を対象に、情報・数学・社会の教科を横断したプロジェクトが始まりました。

生徒たちはチームに分かれ、地域の高齢者向け見守りサービスや、地元商店街のデジタル集客支援など、実際に課題解決を目的としたアプリを企画・設計。企業から派遣された現役エンジニアが定期的にオンラインでコードレビューや設計支援を行い、教育の枠を超えた「実装型学習」が展開されました。

特筆すべきは、技術指導だけでなく、「プロジェクトの進め方」や「ユーザー視点の思考法」など、IT業界で求められるマインドセットまで含めて指導が行われた点です。生徒たちは自然と、社会との接点を意識したアウトプット思考を身につけていきました。

生徒の進路意識の変化

プロジェクト終了後のアンケートでは、参加者の8割以上が「IT分野に興味を持つようになった」と回答し、進路希望にも明確な変化が現れました。実際に、理工系大学の志望者数が前年比で2倍に増加したというデータも報告されています。

また、企業側もこの取り組みをCSR活動の一環として継続支援を決定し、「次世代人材の発掘」としても一定の成果が見られたと評価しています。教科学習を越えて、社会と技術を“自分ごと”として捉える体験が、生徒たちの未来を切り拓く力となっているのです。

建設会社とまちづくり提案(福岡県・定時制高校)

社会参画を体感するプロジェクト

福岡県内の定時制高校では、地域の建設会社と連携し、生徒が実際の都市開発プロジェクトに参画する探究学習が行われました。対象となったのは、市内の駅周辺再開発計画。生徒たちは「10年後の自分たちの暮らしをデザインする」という視点で、まちづくりのアイデアを練り上げていきました。

このプロジェクトの大きな特徴は、「実在する計画」に生徒の視点を取り入れた点です。再開発の初期段階で地域住民や高校生の声を拾いたいという企業側の意向と、実社会での学びを実現したいという学校の意図が一致し、連携が実現しました。

生徒たちは建設会社の技術者や都市計画コンサルタントの指導を受けながら、街の現状をフィールドワークで把握し、課題を整理。住民ニーズや高齢化、災害対応なども考慮に入れたうえで、模型やプレゼン資料を使って自らの再開発プランを企業幹部に提案しました。

定時制の新たな可能性

このプロジェクトを通じて、生徒たちは「自分の意見が社会に影響を与える」実感を得ました。特に、働きながら学ぶ定時制の生徒にとって、自分の生活経験や仕事視点をまちづくりに活かすという機会は、単なる教科学習以上の意義を持っていたのです。

企業側も生徒の提案に感銘を受け、「彼らは視点が実践的で、現場に近い」と高く評価。その結果、一部の生徒はインターンシップとして実際のプロジェクトチームに参加する機会を得るまでに至りました。

この事例は、定時制高校でも高度な探究学習が可能であり、企業連携によって新たな学びと社会的役割が生まれることを示す象徴的な成功例です。

小売業とのマーケティング実践(大阪府・商業高校)

店舗分析から販促施策の提案まで

大阪府内の商業高校では、大手小売チェーンと連携した本格的なマーケティング実践プログラムが展開されました。プロジェクトのテーマは「売上低迷中の店舗の販促改善提案」。高校生が実際の販売データをもとに、課題分析から施策立案までを担うという、企業さながらの取組です。

生徒たちはまず、対象店舗を視察し、来店客の動線や陳列の工夫、接客の様子を観察。さらに、企業から提供されたPOSデータや購買分析資料をもとに、売上不振の背景を多角的に考察しました。

その後、プロモーション戦略や商品配置の改善案をグループで検討し、店長や本部のマーケティング担当者に向けてプレゼンを実施。実際に提案の一部は採用され、店舗での販促キャンペーンに反映されました。生徒たちは「机上の学び」ではなく、「お客様の行動を動かす」手応えをリアルに体感することができたのです。

即戦力人材の育成に直結

このプロジェクトを経て、生徒のビジネススキルには明確な成長が見られました。特に、データ分析力、提案力、コミュニケーション能力の向上が顕著で、企業側からは「高校生とは思えないレベルの実践力」と高い評価を受けました。

実際に、この取り組みをきっかけに同チェーン企業に3名の生徒が新卒入社し、店舗運営の即戦力として現場で活躍しています。企業側もこの探究学習を「新たな人材発掘と地域貢献の両立」と位置づけ、翌年度以降も継続支援を決定しました。

「学びが仕事につながる」「自分の力が社会で通用する」と実感できるこのような機会は、キャリア教育の本質を体現する好例と言えるでしょう。

スタートアップと社会課題解決(神奈川県・中高一貫校)

高校生が社会起業家とチーム結成

神奈川県の中高一貫校では、社会課題をテーマとしたスタートアップとの連携型探究学習が行われています。参加したのは高校1〜2年生の希望者で、プログラムのテーマは「テクノロジーで教育格差をなくす」。パートナーとなったのは、教育支援を手がける都内のスタートアップ企業でした。

プロジェクトの始まりは、社会課題に関する講義とワークショップ。生徒たちは、国内外の教育格差やデジタルデバイドの現状を学び、「自分たちが本当に変えたい社会問題」を見つけ出すことからスタートしました。

その後、企業のメンターとチームを組み、教育アプリや学習支援サービスのビジネスモデルを立案。実際にユーザーインタビューやペルソナ設計、プロトタイプ制作まで行い、最終的には投資家や教育関係者の前でピッチを実施するという、本格的な起業体験が用意されていました。

企業側のメリットも明確に

この取り組みは、生徒の思考力や表現力を育むだけでなく、スタートアップ企業にとっても多くの学びとメリットがありました。高校生ならではの自由な発想や率直な意見が、製品開発や市場調査における貴重なフィードバックとなったのです。

また、企業にとっては「社会課題解決×教育」という文脈でのブランド認知が高まり、CSRや採用広報の側面でも大きな波及効果をもたらしました。プログラム終了後には、「高校生と継続的な共創を行うプロジェクトチームを設立したい」とする企業側の意向により、翌年度以降の継続実施が決定。

生徒、学校、企業それぞれが目的を持って関わり合うことで、持続可能で価値のある探究学習モデルが実現された好例です。

成功の鍵は「共創」と「実行力」

ここまで紹介してきた5つの探究学習事例に共通しているのは、「学びが社会とつながる設計」そして「企業と学校がパートナーとして歩む姿勢」です。単なる職業体験や企業紹介にとどまらず、生徒が主体となり、企業の担当者と“共創”する場が用意されている点が、成功の決定的な要因といえるでしょう。

また、企業側も「教育はCSRではなく未来への投資」と捉え、短期的な成果ではなく、生徒の成長プロセスに寄り添っている姿勢が印象的です。探究学習の本質は、「問いを立て、自ら学び、価値を創出する力」を養うこと。そのためには、学びを“本物”に近づける仕掛けが必要不可欠です。

学校現場においては、既存のカリキュラムや時間割の制約がある中でも、柔軟な発想と外部資源の活用によって、実現可能なモデルが広がりつつあります。まずは小さな一歩からでも、企業との連携による学びのアップデートを始めてみませんか?

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