旭川実業高校で創業教育の出張授業を実施──地域機関との共創が「あさひかわ新聞」に掲載されました

2025年6月3日付の「あさひかわ新聞」に、私が企画・実施した探究学習の授業が掲載されました(掲載号:https://www.asahikawa-np.com/digest/2025/06/004037691/)。旭川実業高校の生徒を対象に、地域の多くの団体と連携して行った本授業は、起業家教育を含む学びの実践です。将来を担う高校生が、自らの力で問いを立て、考え、社会に働きかける力を育むこの取り組みが、地域メディアによって報じられたことは、教育活動としての意義のみならず、地域ぐるみで次世代を育てていく必要性を改めて感じさせるものでした。

目次

創業教育とキャリア探究が交差する場──旭川実業高校での授業概要

本授業は、旭川実業高校の「総合的な探究の時間」にて実施されました。単なる進路指導や受験準備を超えて、生徒一人ひとりが「将来、どのように社会に貢献し、どのように価値を生み出す人になるか」を主体的に考える機会となるよう設計しています。

企画・実施を担当したのは、筆者自身(aspora代表/旭川実業高校教諭・今野佑飛)です。大学入試における総合型選抜への対応も視野に入れつつ、何よりも生徒たちが自ら考え、行動し、社会で価値を発揮できるようになるための土台を築きたいとの思いで構想しました。

その中で、今回ご協力いただいたのが、日本政策金融公庫による創業教育支援の出張授業です。同公庫が全国的に展開する「高校生ビジネスプラン・グランプリ」の枠組みを活用し、実社会に通じる課題解決力やビジネスマインドを、探究学習の文脈の中で自然に体得できる場を創出することができました。また、旭川市役所地域活動推進課、日本政策金融公庫旭川支店、旭川信用金庫、有限責任事業組合じもじょき旭川、一般財団法人旭川産業創造プラザの職員の方がファシリテーターとして参加しました。

地域機関との連携による「生きた探究学習・起業家教育」

本授業は、日本政策金融公庫が全国で展開している「高校生ビジネスプラン・グランプリ」支援事業の一環として行われました。将来を担う高校生に対して、創業マインドや経済的視点を育むことを目的とし、同公庫の職員が各地域の学校へ出向く「出張授業」という形で実施されています。

当日は、北海道創業支援センターの上席所長代理・鹿取大祐さんを講師にお迎えし、旭川実業高校の2年生約160名を対象に90分の授業を実施しました。生徒たちは、設定している「探究課題」に対して、それを起点に「どのようなモノやサービスがあれば人がより幸せになるか」を考えるプロセスを体験しました。

地域機関との連携により、学校という枠を超えて「社会との接続」を感じられる点は、この授業の大きな特徴の一つです。単なる知識の習得ではなく、現実の社会構造や経済の仕組み、そして自分たちの未来との接点を具体的に感じ取る――そのような“生きた探究学習”として、生徒たちに深く響いた時間となりました。

ブレインストーミングで広がる発想の可能性

授業の前半では、創造的思考の土台づくりとして「ブレインストーミング」のワークを行いました。テーマは「学校生活をもっと楽しくするアイデア」。生徒たちはまず個人でアイデアを出し、その後2〜4人のグループに分かれて意見を交換しながら発想を広げていきました。

印象的だったのは、アイデア出しのプロセスにおいて「正解を求める」思考から一歩踏み出し、「自由に考える」姿勢への切り替えが見られたことです。普段の教科学習ではなかなか経験できない「制約のない思考」は、多くの生徒にとって新鮮な刺激となりました。

グループで出し合ったアイデアは、「楽しさ(効果)」を縦軸に、「費用(実現コスト)」を横軸に取ったマトリクス上に整理され、優先順位を議論する時間も設けました。単に「面白いことを考える」だけではなく、それを実行可能性の観点から検討するプロセスによって、発想力と現実感覚の両方が育まれる構成です。

生徒たちは、思考の幅を広げるだけでなく、自分とは異なる他者の視点に触れることで、アイデアを「育てる」面白さにも気づき始めていました。

ビジネスアイデアを「構造的に」捉える視点

授業の後半では、鹿取大祐さんから「ビジネスとは何か」「アイデアとは何か」といった本質的な問いが投げかけられました。単なるアイデアの寄せ集めではなく、「誰の、どのような困りごとに応えるのか」という構造的な視点を持つことが、ビジネスを考える上での第一歩であるというメッセージが伝えられました。

特に印象深かったのは、「人が求めるものは年齢・環境・ニーズによって変化する」という点に関する解説です。日々の生活の中にある不便や不満に目を向け、それを起点に「解決する方法=ビジネスのタネ」を見つけるという考え方は、生徒たちにとって新鮮であり、同時に自分たちにもできることがあると気づかせてくれるものでした。

鹿取さんは、大きく成長するビジネスには次の3条件があると話しました。

  • ① 誰もが日常的に行っていること
  • ② 多くの人がそこに不便や面倒を感じていること
  • ③ それを新しい方法で解決できること

こうしたフレームに沿って物事を考えることで、アイデアが単なる思いつきではなく、「社会に求められる価値提案」へと変わっていきます。生徒たちは、自分の身の回りや家族、地域の課題からヒントを得る思考法に触れ、「課題発見→価値創出」というプロセスを体験的に学んでいきました。

生徒の声から見える「学びの質」

授業後に生徒たちから寄せられた感想には、「難しさ」と「楽しさ」が共存する探究学習ならではの学びの深さが現れていました。

たとえば、「アイデアがなかなか出てこなくて難しかった」「他の人と考え方が違って、まとめるのが大変だった」という声は、単なる苦労の共有ではありません。そこには、自分と異なる視点に出会ったときの戸惑いと、その中で協働しながらアイデアを形にしていくプロセスに対する誠実な向き合いが感じられました。

一方で、「いろんな視点が知れて楽しかった」「環境によって人が求めるものが変わると学べた」「自分も輝ける場所に行って、価値のある人になりたいと思った」といった言葉からは、内面的な気づきや動機づけの芽生えが見て取れます。

このように、生徒の語りから見えてくるのは、単なる知識やスキルの習得ではなく、「自分は何に価値を感じ、どのように社会と関わっていきたいのか」といった、本質的な自己理解に踏み込む学びのプロセスです。探究の時間が、進路や職業という枠を超えて、生徒たちの人生観そのものに作用している手応えを感じました。

今後の展開──グランプリ応募と地域での実装へ

今回の出張授業をきっかけに、生徒たちは「高校生ビジネスプラン・グランプリ」への応募に向けた具体的なプランづくりに取り組み始めています。9月には中間発表会、12月には最終発表会を予定しており、今後数ヶ月にわたり、仮説の構築と検証、アイデアのブラッシュアップを重ねていくことになります。

こうしたプロセスは、単なるコンテストのための準備ではありません。生徒たちが地域の課題に目を向け、自らの関心や得意分野と照らし合わせながら「誰かの困りごとを自分ごととして捉える」視点を養う時間でもあります。

加えて、地元企業や自治体の方々と連携することで、ビジネスプランが実社会での検討材料として扱われる機会も生まれていきます。机上の空論にとどまらず、「実装可能性」を見据えた対話や伴走を通じて、学びと地域が接続する実感を持たせたいと考えています。

教育が地域と共創することで、子どもの可能性が拓かれ、地域にも新たな循環が生まれる──この連動構造こそが、私が目指す教育の未来像です。

地域教育に投資するという選択──「ツクルヒト」へのご参加をお待ちしています

今回ご紹介したような起業家教育・探究学習の実践は、決して学校の中だけで完結するものではありません。むしろ、社会とつながることでこそ、生徒たちの学びは現実味を帯び、行動へと転化していきます。

私が運営するプログラム「ツクルヒト」では、こうした学びの場に、企業や自治体・団体の皆さまが“共創者”として関わっていただく仕組みを提供しています。

具体的には以下のような形でのご参画が可能です:

  • スポンサー企業として、授業や発表会に登壇・関与することで、自社の理念や事業の魅力を直接高校生に伝える機会が得られます。
  • 生徒たちに伴走し、探究テーマやビジネスプランに対してコメントやアドバイスを行う中で、将来の採用候補者となり得る若者と早期に接点を持つことができ、魅力を伝えることができます。
  • また、若手職員がファシリテーターやアドバイザーとして関わることで、対話力・伴走力・課題発見力といった人材育成の機会としても活用できます。
  • 教育現場への関与を通じて、地域の人的資本形成に貢献するCSR活動として位置づけられます。

探究学習は、地域社会にとって「教育」という枠を超えた、人的資本・組織ブランドの再構築のチャンスでもあります。

私は、教育を“社会との接点”に変えることで、学びと経済と地域の持続可能な循環をつくろうとしています。ともに子どもの未来・地域の未来を育ててくださる企業・団体の皆さまとの出会いを、心よりお待ちしております。

こうした取り組みに共感いただける企業・団体の皆さまには、次世代育成と人材開発を兼ねたCSR・ESG施策として、ぜひ「ツクルヒト」へのご参画をご検討いただければ幸いです。
詳細は公式サイト(https://tankyu-cocreation.jp/)をご覧ください。対話ベースでのご相談も歓迎しています。

起業家教育・探究学習の導入をご検討中の学校関係者の皆さま、授業設計や外部連携に関するご相談も承っております。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次