総合型選抜に強い!高校の「探究×起業家教育」で合格を勝ち取る方法

大学の総合型選抜では、「主体的に学び、社会と関わる経験」がますます重視されています。こうした背景の中で、高等学校における「起業家教育」と「総合的な探究の時間」を融合させた実践が注目を集めています。本記事では、実際に複数の社会課題をテーマに探究活動を行い、ビジネス的な視点で解決に挑んだ高校生の事例をもとに、総合型選抜で評価される活動のつくり方と、それをどのように発信すれば合格につながるのかを丁寧に解説します。

目次

なぜ「起業家教育×探究」は総合型選抜で強いのか?

評価基準に合致しやすい「主体性」「社会貢献性」「論理性」

総合型選抜では、知識偏重ではなく、「自ら課題を見つけ、考え、行動する力」が評価されます。文部科学省が示すアドミッション・ポリシーにも、「主体性」「多様性」「協働性」といったキーワードが並びます。まさにこれらは、起業家教育に取り組む中で自然と育まれる資質です。

例えば、「地域スーパーの価格競争力を高めるための電子レシート化」というテーマは、単なるIT活用ではなく、地域住民の生活や流通の構造まで踏み込んだ課題設定が必要です。こうしたテーマを探究し、仮説を立て、行動に移し、改善していく過程そのものが、大学が求める思考力と実践力を証明する材料になります。

また、活動の中で得たデータやフィードバックをもとに論理的に説明する力も問われます。アイデアを「なぜやるのか」「どうやるのか」「誰に届けるのか」という文脈で説明できれば、それは志望理由書や面接において強力な武器となります。

SDGsや地域課題との接続がしやすく、大学側も注目

総合型選抜を行う大学では、社会や地域と関わりながら課題解決に取り組んだ経験が重視される傾向にあります。 こうした活動は「主体性」「協働性」「社会的関心」の表れであり、入試での重要な評価指標に一致しています。

その点で、起業家教育を通じた探究活動は非常に親和性が高いのです。
たとえば以下のようなテーマは、そのままSDGsの文脈に乗せて語ることが可能です:

  • 「廃校を活用した高齢者学校の設立」 → SDG4「質の高い教育」、SDG11「住み続けられるまちづくり」
  • 「AIと教員の共存」 → SDG9「産業と技術革新」、SDG4「教育の質」

こうした接続があることで、大学における学びや研究とも連動しやすく、面接官からの関心も高まりやすくなります。

探究テーマの立て方と背景設定のコツ

地域課題や身近な疑問から出発する

探究活動を成功させるうえで最も大切なのは、「自分ごと」として捉えられ、実社会に根差したテーマを選ぶことです。さらに、それが一時的な関心で終わらず、時間をかけて深め続けることができるテーマであることが重要です。

起業家教育における探究テーマは、ただ新しいアイデアであるだけでは不十分です。社会課題と向き合い、それに対する自分の問題意識や経験とつながってこそ、学びが本物になります。

たとえば、「レシートを電子化して地域スーパーの競争力を上げる」というテーマは、日々の買い物体験や地域の商業環境という生活に根ざしたリアリティがあります。だからこそ、課題設定にも説得力が生まれ、モチベーションを保ちながら継続的に取り組むことができるのです。

また、テーマが自分にとって意味のある問いであればあるほど、学びの深化も自然に進みます。探究とは「問い続けること」です。時間をかけて何度も仮説を立て直し、改善しながら活動を広げていく姿勢そのものが、大学においても高く評価されます。

テーマ例①「レシート電子化で地域スーパーを救う」

このテーマは、日常生活の中のちょっとした不満や疑問から出発した実社会に根ざした課題です。物価高や価格の不透明さを感じたとき、「なぜ同じ商品でも店によってこんなに値段が違うのか?」「もっと分かりやすく比較できれば地元のお店にも人が戻るのでは?」という気づきが、自分ごととしての問題意識につながります。

その視点から、電子レシートを使って価格情報を見える化するというアイデアは、IT技術を使った地域経済支援という観点に発展します。これは単なる技術提案ではなく、「地域のお店をどうしたら応援できるか」という継続的な問いかけとして深め続けることが可能なテーマです。

テーマ例②「AIと教員の共存」から教育の未来を考える

このテーマは、学ぶ当事者としての視点から出発した教育探究です。「AIが授業をする時代が来るのでは?」という素朴な疑問から、「でも先生がいる意味って何だろう?」「AIと人間、どちらがどんな役割を果たすべきか?」という形で問いを深めていったケースです。

このような探究は、自らが教育を受ける立場だからこそ見えてくるリアルな課題であり、教育の未来に関わる構造的な問題に直結します。また、AIツールの可能性や限界を検証しながら、「教員が本当にやるべき仕事とは何か?」を考え続けることは、教育学・情報科学の両面からアプローチ可能な多層的テーマでもあります。

テーマ例③「廃校×高齢者」SDGs的アプローチの重要性

このテーマは、地域の空き施設や人口構成の変化といった現実的な社会構造の変化に基づいています。近所に廃校がある、祖父母が学ぶ機会を求めている——そうした身近な経験を出発点に、「廃校を活用して高齢者の学びの場をつくる」という問いが立ち上がります。

この探究はSDGs(特に目標4・11)と直結しており、教育・福祉・まちづくりを横断する複眼的視点が求められます。また、廃校をただ“使う”のではなく、“誰がどのように学び、地域にどう関わるのか”という問いを通じて、深く継続的に掘り下げられるテーマです。

活動の流れと具体的プロセス(時系列で解説)

課題設定・リサーチ(地域調査・現状分析・関係者ヒアリング)

探究活動において課題設定の後に行うリサーチは、単なる情報収集ではありません。課題を見立てる力を養い、その問いの精度を高めるための重要なプロセスです。とりわけ「実社会に根ざしたテーマ」であるほど、表面的な理解では見えてこない構造的な問題や当事者の思いをつかむことが求められます。

リサーチの質と深さは、そのまま探究の深度や説得力に直結します。例えば「地域スーパーの競争力向上」をテーマとするなら、単に物価や売上データを調べるのではなく、地元の店主や買い物客に話を聞き、「どんな悩みがあるのか」「日々の業務で困っていることは何か」を理解することが不可欠です。

こうした一次情報を丁寧に集めることで、自分が抱いていた課題設定が適切だったのかを検証できます。そして、そこで得た気づきをもとに、当初の問いや仮説を磨き直す姿勢こそが、真の探究と言えるのです

また、他のテーマ──たとえば「廃校を活用した高齢者学校の設立」や「AIと教員の共存」などでも同様です。行政の空き施設活用計画や教育現場でのAI導入状況といった公式資料だけでなく、実際にそれに関わる人の声を聞くことが、課題を“自分ごと”として捉えるきっかけになります。

リサーチによって得た情報を鵜呑みにせず、そこから「本質的な問題は何か?」「解決すべき優先順位はどこか?」を再構築することが、総合型選抜でも評価される論理的思考力と課題発見力を示すことにつながります。

仮説設定とビジネスモデルの設計

調査結果をもとに、「こうすれば課題を解決できるのではないか」という仮説を立てるフェーズに移ります。ここで重要なのは、思いつきではなく、根拠のある論理的な提案を組み立てることです。

起業家教育的な視点では、「誰に、どんな価値を、どう届けるか?」というビジネスモデルの構築が求められます。たとえば電子レシートの例では、「中小スーパーの利益率を上げる」「消費者の購買判断を助ける」「データを使った仕入れ最適化」といった多面的な価値を整理し、それを実現する方法(アプリ開発やUX設計)を検討します。

この段階でフレームワーク(例:ビジネスモデルキャンバス)を使うと、提案の説得力と実現可能性が高まり、大学入試でも論理構成の強さとして評価されます。

プロトタイプ作成と発表会・ピッチ大会への挑戦

アイデアがまとまったら、それを実際に「形」にするプロトタイピングのフェーズに入ります。起業家教育の文脈では、企画書やプレゼンだけでなく、モックアップ、アプリの簡易モデル、パンフレット、動画なども有効です。

これを学校内外の発表会、ピッチイベント、探究成果発表会などで公開し、実際の第三者評価を受けることが非常に大きな学びになります。うまくいかない部分や新たな課題に気づけるだけでなく、「社会にどう伝えるか」という表現力の訓練にもなります。

また、他の参加者や審査員からのフィードバックは、大学の面接や志望理由書に活かす「外部視点」として有効です。

フィードバックを受けた改善と再提案

本質的な探究活動は「やりきり型」ではなく、「改善し続ける循環型」です。一度発表して終わりではなく、得られた意見を受けて仮説を再構築し、より洗練されたアイデアへと磨き直すことが、探究の深まりを示す重要なステップです。

実際、大学の総合型選抜では、「最初からうまくいった経験」よりも、「試行錯誤の中で思考を深めた経験」がより高く評価されます。

そのため、「問い→行動→検証→再設計」という流れを何度か繰り返し、自分なりの変化や成長を可視化できるよう記録を残しておくことも重要です。これは志望理由書や面接で、自分の成長ストーリーを語る際の中核になります。

探究活動の成果と自己成長のポイント

起業への関心が芽生えた瞬間

起業家教育をベースとした探究活動に取り組む中で、多くの生徒が経験するのが、「これ、自分で本当に実現できるかもしれない」というリアルな手応えです。課題を発見し、仮説を立て、試作して他者に提案するというプロセスは、まさに起業そのものの入り口です。

「レシート電子化」のようなテーマでは、技術面やコスト面など難しい課題もありますが、それでも自分のアイデアが社会の役に立つかもしれないという感覚は、学びの原動力になります。このような経験を通して、将来的にビジネスという手段で社会を変えることへの興味が生まれ、「起業家」というキャリアの可能性が現実味を帯びてきます。

チームで協働し、社会にインパクトを与える体験

多くの探究活動はチームで進められます。個人のアイデアだけでなく、メンバー同士で意見を出し合い、対立や調整を経てひとつの方向性にまとめていく過程は、協働性・リーダーシップ・対話力といった非認知能力の養成にもつながります。

特に、発表会やピッチコンテストなどで外部のフィードバックを受けた場面では、「自分たちの活動が社会にどう受け止められるか」という視点が加わります。これにより、プロジェクトの意義や伝え方を見直し、“社会に届ける”という実践的な力が身についていきます。

こうしたプロセスを経た生徒たちは、「ただ知識を学ぶ」姿勢から、「社会と関わりながら自分で問いをつくる」学習者へと変化していきます。

書類・面接で語れる「具体性」と「継続性」

大学の総合型選抜では、「どんな活動を行ったか」だけでなく、「なぜそれに取り組み、どんな課題意識を持ち、どのように考え、どんな学びを得たのか」といったプロセスと内面の変化を言語化できるかが、重要な評価ポイントとされています。
これは文部科学省が定める「学力の三要素」のうち、「主体性」や「思考・判断・表現力」の評価と直結しており、出願書類や面接の設問でも頻繁に問われる部分です。

起業家教育型の探究活動は、リサーチ、企画立案、試作、発表、改善という一連のプロセスが明確であるため、書類や面接でのストーリーテリングに非常に適しています。活動が複数年にわたって続いていたり、継続的にブラッシュアップされていれば、「継続性のある主体的学び」として高く評価されます。

特に、途中で失敗したことや葛藤したことを正直に語り、それをどう乗り越えたのかを伝えることで、単なる成功体験にとどまらない、人間的成長の証明にもなります。

総合型選抜に向けたアピール方法

志望理由書にどう書くか(例文付き)

志望理由書では、「なぜこの大学・学部を選ぶのか」と同時に、「自分のこれまでの経験とどのように接続しているか」を説得力を持って伝えることが求められます。

起業家教育を通じた探究活動は、志望理由書でのストーリーテリングに非常に有効です。単なる思いつきや趣味レベルではなく、「社会課題の発見→構造的理解→実践→改善」というプロセスを経た経験は、大学での学びにも接続しやすく、学問的意欲の裏づけとして機能します。

📄 例文(抜粋)

私は高校の探究活動で、地域スーパーの価格競争力を高めるための電子レシート導入というプロジェクトに取り組みました。日常の買い物で感じた疑問から出発し、店主へのヒアリングや市場調査を重ね、地域経済の構造的課題に気づくようになりました。この経験を通じて、ICTを活用した地域課題の解決に関心を持つようになり、貴学で情報と社会の関係を体系的に学びたいと考えています。

重要なのは、「活動の事実」ではなく、それを通じて何を考え、どう変化し、大学でどう発展させたいのかという思考と学びのつながりを明確にすることです。

エントリーシートでの活動要約法

エントリーシートでは、活動を簡潔にまとめるスキルが問われます。ポイントは、「結果よりもプロセス」「事実よりも意味」です。

以下の構成で書くと、読み手に伝わりやすくなります:

  1. テーマと背景:どんな課題意識から始まったか
  2. 行動と工夫:自分が何をしたのか、どう改善したのか
  3. 成果と学び:結果や反応、そこからの内面的成長
  4. 今後へのつながり:大学でどう発展させたいか

例文や図を使ってビジネスモデルを視覚化するのも効果的です。また、定量的な成果(アンケート回答数、SNS反響など)があれば、数字で説得力を高めることもできます。

面接で強く伝えるための「3つの軸」

面接で差をつけるためには、「質問に答える」のではなく、「自分の軸を伝える」意識が必要です。そのために有効なのが、以下の3つの軸を明確にしておくことです:

  1. なぜその課題を自分が扱うべきなのか(当事者性)
  2. 課題をどう捉え、どう行動したのか(思考力・実行力)
  3. そこからどんな学びが生まれ、どう未来につながるのか(成長と展望)

これらをエピソードと共に語れるよう準備しておくことで、一貫性と説得力のある受け答えが可能になります。模擬面接での練習も有効ですが、表面的な受け答えではなく、自分の言葉で語れる状態を目指しましょう。

💡 補足:この3つの軸は、文部科学省が総合型選抜で重視する「学力の3要素(主体性・思考力・表現力)」に対応しています。大学側が面接を通じて確認したいのは、まさにこれらの観点での成長や適性です。

今後の展望と読者へのメッセージ

起業はあくまで手段。社会を変える「問い」の力を育てよう

起業家教育と聞くと、「ビジネスで成功すること」がゴールだと思われがちです。しかし、本質はそこにはありません。高校段階での起業的探究とは、**「社会をよりよくするには?」という問いを立て、その答えを試行錯誤しながら形にしていくプロセス」**にあります。

つまり、起業とは手段であり、自ら問いを立てて行動できる人材を育てることこそが目的です。そしてその力こそが、大学での学びや研究、さらにその先の人生で大きな武器となります。

「自分のまちはなぜ変わらないんだろう?」「なぜ教育の場にAIが必要なのか?」そうした疑問に真剣に向き合い、問い続ける力を育むことが、今の教育における最大の価値です。

「やってみたい」を形にする探究が、大学合格にもつながる

多くの受験生が、探究活動や課外活動に対して、「受験にどう役立つのか」という視点を持ちます。それ自体は間違いではありません。ただし本当に大切なのは、「やってみたい」という思いを原動力にし、それを深め続けた先に、合格という結果がついてくる」という順番です。

起業家教育と総合的な探究の時間を融合させた実践は、まさにこのプロセスの象徴です。そこには、単なる受験対策を超えた、生き方そのもののヒントがあります。

探究とは、「正解のない問い」に向き合う姿勢のこと。だからこそ、大学側もその力を高く評価するのです。

起業家教育と探究学習の融合を検討中の学校様へ。カリキュラム設計や外部連携支援のご相談はお気軽にどうぞ。

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