【人材確保×教育CSR】企業が高校の探究学習に参画すべき理由と成功事例

目次

なぜ今、人材確保に「教育連携」が注目されているのか?

採用難──この言葉に強くうなずく企業担当者は少なくありません。
少子化の影響により、若年層人口は年々減少しており、特に地方・中小企業では採用競争が激化しています。リクルートワークス研究所の調査によれば、2030年には15〜24歳の若年労働人口が2015年比で約15%減少するとの予測もあります。

従来の採用手法、例えば合同説明会や新卒向け求人サイトへの掲載だけでは、企業と学生との「接点」は限定的になりがちです。学生の間でも大企業志向や都市部志向が強く、地方企業やBtoB事業を展開する企業は“そもそも知ってもらえない”という課題**に直面しています。

このような状況の中で、注目されているのが「教育現場との連携」です。
特に、高校における「探究学習」という制度が近年拡充され、企業が“授業の中で生徒と直接出会う機会”が増えつつあります。これは単なる職業講話やパンフレット配布ではなく、生徒たちと課題解決に取り組む協働的なプロジェクトが主流です。

つまり、教育連携は単なる社会貢献ではなく、企業と未来の人材との「第一接点」をつくる場になりつつあります。これは従来の就職活動よりも前の段階で、自社の存在や価値を深く理解してもらえる重要なタイミングなのです。

加えて、Z世代・α世代といった新しい若年層は、「共感」や「社会的意義」を重視する傾向があります。企業が地域や社会とどのように関わっているか、そして“何のために働くか”というストーリーを、早い段階で伝えることは、採用成功率を大きく左右する要因になり得るのです。

高校の探究学習とは?企業との接点が生まれる背景

「総合的な探究の時間」──これは、2022年度から全国の高等学校で本格的に必修化された学習科目です。文部科学省が推進する新学習指導要領により、高校生は社会や地域に存在する課題を自ら設定し、調査・仮説・提案を通して“自分なりの答え”を導き出す探究型の学びを体験することが求められています。

この教育改革の背景には、AI時代・変化の激しい社会において、「知識を覚えるだけでなく、課題を発見し、他者と協働して解決する力」が必要とされているという認識があります。

探究学習の基本構造

探究学習は、以下のようなプロセスで進行します:

  1. 課題の設定(例:地域の空き家問題をどう解決するか?)
  2. 情報の収集(インタビュー、統計調査、現地視察など)
  3. 整理・分析及び仮説の構築と検証
  4. 提案書の作成・発表

この中で、企業が支援・協力できるフェーズは非常に多く、たとえば次のような形での参画が可能です:

  • 業界や地域課題に関する講話(インプット支援)
  • フィールドワーク先としての受け入れ
  • プロジェクトの伴走支援(仮説の検討や提案内容へのフィードバック)

なぜ企業との接点が増えているのか?

文部科学省は探究学習の中で「地域や企業との協働」を推奨しており、多くの高校が外部パートナーとの連携を求めています。
また、地方自治体も教育×地域活性を目的としたプロジェクト支援に力を入れており、官民連携の推進により、企業の受け入れ機会が急増しています。

企業から見れば、これは「将来の採用候補者と、授業の一環で自然に関係性を築ける場」と言えます。しかも、従来のインターンシップとは異なり、大学1〜2年生ではなく、高校1〜2年生の段階からの接点形成が可能になるという点で、企業ブランディングや職業理解促進においても非常に有利です。

高校の探究学習に企業が参画する3つの理由

企業にとって、教育連携は「社会貢献」だけでは終わりません。探究学習への参画は、人材確保・組織強化・ブランド形成に直結する実利のある戦略です。ここでは、企業が高校の探究学習に参画すべき理由を、主に3つの観点から解説します。

理由①:未来の人材と“就職活動前”に接点を持てる

通常、企業と学生の接点は大学3年生のインターンや企業説明会がスタート地点ですが、それではすでに競争は始まっています。一方、探究学習に参画すれば、高校1〜2年生の段階で“自社の価値や魅力”を体験的に伝えることが可能です。

この「早期接点」が採用にどう影響するかを示す例として、ある地方企業では、探究学習を通じて関わった生徒が、高校卒業後に自社を指名して入社を希望したというケースがあります。生徒側も“自分の考えを受け止めてくれた企業”へのロイヤルティが高く、入社後の定着率も高い傾向が確認されています。

理由②:若手社員の育成・エンゲージメント向上につながる

探究学習に参画する際、多くの企業が「若手〜中堅社員」を講師・メンターとして派遣しています。この役割を担うことは、“教える側の経験”を通じた人材育成の好機でもあります。

実際に、企業からは次のような声が聞かれます:

  • 「人前で話す力、わかりやすく伝える力が格段に上がった」
  • 「会社の理念や仕事の意義を再認識する機会になった」
  • 「生徒からの質問で自分の視野も広がった」

これは単なるボランティア活動ではなく、社内人材の育成施策の一環としての価値を持っています。

理由③:企業ブランディングと地域密着型の信頼構築ができる

高校との連携は、地域の中での「企業の信頼性・親しみやすさ」を高める絶好の機会です。特に地場企業や中小企業にとって、“地域に根ざした社会貢献”を可視化する場として活用されています。

学校の公式HP・広報誌・地域メディア等で企業名が紹介されることも多く、企業の社会的評価(サステナビリティ・SDGs対応など)向上にも寄与します。採用においても、「地域に貢献している会社だから働きたい」と志望動機に挙げる学生が増えているという報告もあります。

🔍 まとめ:探究学習参画は、採用・育成・ブランディングの“三方よし” 探究学習は、単に「良いことをしている」という道徳的価値ではなく、企業成長に直結する戦略的な選択肢です。将来の人材と出会い、社内の人材を育て、地域からの信頼を得る──その全てが実現できる場が、今の学校現場にはあります。

実際の企業×高校の連携事例紹介

事例①:佐賀商業高等学校 × 菅公学生服株式会社

テーマ: 制服の余り布を活用したSDGs商品企画​

概要:
佐賀商業高等学校では、菅公学生服株式会社と連携し、制服製造時に発生する端材(余り布)を活用した商品企画授業を実施しました。​1年生約280名が参加し、SDGsセミナー、プレゼンテーション準備、クラス発表、代表チームによるプレゼンテーション大会の4ステップで進行しました。 ​

成果:

  • 生徒たちはSDGsの理解を深め、廃棄物の有効活用について具体的なアイデアを提案しました。​
  • 企業側は若年層の新しい視点を得るとともに、地域社会への貢献と自社のCSR活動の一環として評価されました。​

事例②:大阪ビジネスフロンティア高等学校 × 凸版印刷株式会社 × 牛乳石鹸共進社株式会社

テーマ: オンライン工場見学を通じたSDGs学習​

概要:
大阪ビジネスフロンティア高等学校の1年生を対象に、凸版印刷株式会社と牛乳石鹸共進社株式会社が共同で、オンライン工場見学とSDGsに関するワークショップを実施しました。​生徒たちは工場の取り組みを学び、地球環境問題について考察しました。 ​

成果:

  • 生徒は企業の具体的なSDGsへの取り組みを知ることで、持続可能な社会づくりへの関心を高めました。​
  • 企業は教育支援を通じて社会的責任を果たし、自社の取り組みを広く周知する機会となりました。​

事例③:浜松開誠館高等学校 × TABLE FOR TWO International

テーマ: 飢餓問題解決に向けた自動販売機設置プロジェクト

概要:
浜松開誠館高等学校の生徒たちは、世界的な飢餓問題の解決を目指し、TABLE FOR TWO Internationalと連携して「TFT自販機」を校内に設置しました。​売上の一部を開発途上国の子どもたちの学校給食支援に充てる取り組みです。

成果:

  • 生徒は社会課題に対する主体的な取り組みを経験し、社会貢献の意識を高めました。​
  • 企業は若者への啓発活動を通じて、社会的課題への関与を強化しました。​

これらの事例から、企業と高校が連携することで、教育的効果と企業側の社会的責任の遂行が両立できることが示されています。​特に、企業は未来の人材との早期接点を持つことで、将来的な人材確保や企業イメージの向上に寄与しています。

中小企業が感じる壁とその解決策

高校との探究学習連携は多くのメリットがありますが、特に中小企業の担当者からは、以下のような「参入障壁」が挙げられることも事実です。ここでは、よくある課題とその現実的な解決策をセットで提示します。

課題①:「学校との接点がない」

多くの企業が最初に直面するのが、「そもそもどこの学校に声をかければいいか分からない」という問題です。特に地方では、学校側も外部連携のノウハウが少なく、“企業と学校の間に“接点が生まれにくい構造”があります。

解決策:

  • 地域の教育委員会や商工会議所との連携を活用する
     → 地域ネットワークを活かせば、教育連携に積極的な学校を見つけやすくなります。
  • 探究学習マッチングプラットフォームの活用
     → 当社のような外部支援サービスを活用すれば、テーマに合った学校との自動マッチングが可能です。

課題②:「自社に教育的ノウハウがない」

「生徒の前で話せる人材がいない」「どんな話をすればいいのかわからない」──教育現場に関わった経験が少ない企業ほど、こうした不安を抱えます。

解決策:

  • 教育支援ガイドラインの活用
     → 探究活動向けの「講話ガイド」「ワーク設計シート」などを提供する支援会社があります。当社でも1時間のプログラム設計と研修をサポートできます。
  • 最初は“見学受け入れ”からスタートする
     → 工場見学やオフィスツアーなど、負担の少ない方法から始めることで参入ハードルが下がります。

課題③:「リソース不足(人手・時間)」

中小企業では、CSRや採用活動に充てられる人員が限られており、「教育支援まで手が回らない」という声がよく聞かれます。

解決策:

  • オンライン対応の探究プログラムを活用する
     → Zoomなどでの「オンライン講話」や「生徒からの事前質問に動画で回答」など、対面に比べて工数を削減できる形式も増えています。
  • 1名の担当者×年1回の関与からスタート
     → 無理に大規模に始める必要はなく、まずは小さな関わりから始め、成果を確認しながら広げるのが有効です。

💡中小企業だからこそ、“地元密着型”という強みが活きる
生徒や学校にとっては、「地域のリアルな課題」を共有してくれる存在こそ価値があります。中小企業の実務経験や地域活動こそが、教育現場にとっては最高の教材です。大手にはない“距離の近さ”と“人の顔が見える関係性”を武器に、ぜひ連携に踏み出してください。

教育連携の始め方:マッチング〜実施までの流れ

探究学習への参画は、一見すると複雑に思えるかもしれません。しかし、実際には多くの企業が段階的かつ無理のない方法でスタートしています。ここでは、企業が教育連携を始める際の具体的なステップを5段階に分けてご紹介します。

STEP 1:自社の強み・提供価値を整理する

まず初めにすべきは、「自社が教育現場にどのようなテーマを提供できるか」を明確にすることです。たとえば:

  • 製造業 → 地域産業やサステナブル生産の現場
  • IT企業 → デジタルスキルやデータ活用の考え方
  • サービス業 → 顧客体験・ホスピタリティの価値

この段階では「教育的でなければ」と気負う必要はありません。日々の業務こそが生徒にとってのリアルな教材です。

STEP 2:学校とのマッチングを行う

次に、「どの学校と、どんな形式で連携するか」を検討します。主な方法は以下の通りです:

  • 地元の教育委員会や校長会への情報提供
  • 商工会・地域団体を通じた紹介
  • 探究学習支援プラットフォーム(例:当社サービス)を活用し、テーマや地域で自動マッチング

プラットフォームを利用すれば、学校側のニーズ(例:SDGs×地域課題など)と企業の提供内容をスムーズにマッチさせることが可能です。

STEP 3:連携内容のすり合わせ・役割分担の明確化

学校とつながった後は、具体的な内容の設計に入ります。重要なのは、お互いの目的・リソースを正しく共有することです。よくある形としては:

  • 単発講演形式(1コマ45〜90分)
  • 数回シリーズのワークショップ形式(2〜4回)
  • 数ヶ月にわたるプロジェクト伴走型(長期型)

企業側がどこまで対応可能か(回数、時間、オンライン可否など)を事前にすり合わせておくと、トラブルを避けられます。

STEP 4:実施に向けた準備と社内調整

実施に向けては、以下のような準備が求められます:

  • 社員の登壇資料・話す内容の準備
  • 当日の流れの確認(司会・Q&A対応など)
  • 社内の広報・人事担当への事前共有

また、登壇社員への簡易研修(生徒への話し方や質問対応のコツなど)を行うことで、本人の不安を減らし、教育効果も高まります。

STEP 5:実施・振り返り・評価

実施後は、生徒・学校からのフィードバックを共有してもらうことで、次回以降の改善に活かすことができます。加えて、企業側でも以下のような社内効果を振り返りましょう:

  • 社員のモチベーション向上・スキル変化
  • 社外への発信材料としての活用(CSRレポート等)
  • 生徒や保護者からの認知・評価

このような記録を残すことで、教育連携を単発のCSRではなく、持続可能な戦略的活動として位置づけることが可能になります。

✅ POINT:最初から完璧を目指さず、「一歩目」を踏み出すことが最も重要です。
教育連携は、経験を積むことで社内にもノウハウが蓄積し、年々取り組みやすくなっていきます。まずは1校・1回から、小さな成功体験を積み重ねていきましょう。

教育CSRを“採用戦略”に変える視点

これまで述べてきた通り、高校の探究学習に企業が参画することは、単なる「教育支援」に留まりません。むしろ、中長期的な視点で見れば“採用戦略の一環”として組み込むべき投資行動です。

ここでは、なぜ教育CSRが人材戦略として機能するのか、その視座を整理します。

■ 教育CSRを「採用戦略」として位置づける3つの理由

① “認知前”の接点こそがブランドになる

Z世代・α世代は、単に有名企業だから選ぶのではなく、自分の価値観にフィットする企業を選ぶ傾向があります。高校段階で出会い、「こんな会社があったのか」「考え方に共感できる」と感じさせられれば、その記憶は就職活動時にも影響を与えます。

企業の名前やロゴよりも、“誰がどう接してくれたか”という体験が強く残るのが教育現場です。これは広告や採用パンフレットでは決して得られない接点です。

② 企業の“採用力”は、今後ますます「社会的評価」で決まる

経済産業省や文部科学省が掲げる「社会に開かれた教育課程」や「キャリア教育」の推進により、学校は企業との協働を求めています。この流れは制度としても加速しています。

同時に、企業のESG・SDGs評価や人的資本開示などの項目においても、「教育・地域貢献」が加点要素となりつつあります。
教育CSRへの取り組みは、社会的信用と採用ブランドの両方を強化する手段となるのです。

③ 社内にも“育成と誇り”の好循環が生まれる

社員が高校生と関わることで、自分の仕事の意義を再確認する機会になります。これは若手社員の離職防止や、ミドル層のリーダーシップ開発にもつながります。

また、「うちの会社が教育に貢献している」と感じられることは、働きがい(エンゲージメント)向上にも直結します。教育CSRは外に向けた活動であると同時に、組織文化を育てる内向きの戦略でもあるのです。

💡 教育と採用は、本来つながっている
学校は人を育て、企業は人を活かす。両者が断絶しているのではなく、滑らかに接続されたときにこそ、未来を支える人材が生まれます。
今、教育現場は企業との対話を求めています。そこに応えることが、これからの企業の“人材競争力”を左右するカギとなるでしょう。

探究学習連携プログラムに関心のある企業様へ

もし御社が次のような課題を感じているのであれば、今こそ教育連携の第一歩を踏み出すタイミングかもしれません。

  • 若手人材の確保が年々難しくなっている
  • 自社を認知してもらう機会が少ない
  • 社員の社会貢献意識やエンゲージメントを高めたい
  • CSRやSDGsに沿った具体的な取り組みが不足している

これらの課題は、中学・高校との探究学習連携を通じて解決の糸口が見えてきます。

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