探究学習では生徒の可能性を拓けない?教育現場の限界と「ツクルヒト」立ち上げの理由

「この子たちは、もっと可能性を持っているのに…」
高校の教員として生徒たちと向き合う中で、私は何度もそう感じてきました。表情に力がある。発想も面白い。けれど、学びのなかでその力を思いきり発揮できているかといえば、正直、そうではない。教室の中に収まりきらないエネルギーが、もどかしくくすぶっているように感じていました。

特に「総合的な探究の時間」に取り組むなかで、生徒たちが“やらされ感”を抱えたまま、決められたテーマや枠組みの中で発表を終えていく様子を目の当たりにしました。本当はもっと、自分の興味関心から問いを立て、自分なりの方法で深めていく力があるはずなのに――。

その違和感はやがて、「学校の中だけでは、生徒の可能性を引き出しきれない」という確信へと変わりました。そして私は、「ツクルヒト」という新たな挑戦を始める決意を固めました。

目次

高校の探究学習に限界を感じた現場教師の気づき

文部科学省が掲げた「主体的・対話的で深い学び」。その中心的な存在として位置づけられているのが「総合的な探究の時間」です。全国の高校で必修化され、各校でも熱心に取り組まれているように見えます。しかし、現場に立つ教員として実感したのは、その理想と現実の間にある“見えないギャップ”でした。

多くの学校では、限られた時間と人手の中で、既存の枠組みに沿った探究活動を進めることに精一杯です。テーマ設定は教師主導になりがちで、課題解決のプロセスも教科書的。生徒が「心から問いを持ち、社会とつながりながら深く学ぶ」という本来の探究のあり方には、なかなか辿り着けていません。

本来、社会のリアルな課題に触れることでこそ、生徒たちの思考や行動は深まっていくはずです。けれど現状では、学校の中で完結する「模擬的な体験」にとどまってしまいがちです。

教員としてできることの限界

私は、教員という立場でできる限りの工夫をしてきました。中小機構と連携し授業を組み立て、審査員を招聘し、生徒の発表の機会も設けました。

しかし、そこには「現場の熱意」だけでは越えられない壁があると痛感しました。学校には、時間的・人的な制約があります。多くの先生方は授業・部活・校務に追われ、新しい学びをゼロから設計し、外部との連携まで担う余裕はほとんどありません。また、外部の企業や自治体側も、学校現場のリズムや教育目的を十分に理解することが難しいのではないかと考え、連携には専門的な“翻訳”と“橋渡し”が必要だと考えました。

また、外部の企業や自治体も学校との連携ノウハウを持っておらず、両者をつなぐ専門的な“翻訳者”が必要です。私は次第に、「教員という立場だけでは、生徒の未来に十分な環境を提供できない」と考えるようになりました。

教育現場の限界を超える「ツクルヒト」という教育起業

私は決意しました。学校という枠にとどまるのではなく、教育と社会をつなぐ“新しい仕組み”を自分の手で創ろう。そうして立ち上げたのが、「ツクルヒト」です。

この名前には、生徒自身が「自分の未来、社会の未来をつくる人」になり、教育に関わるすべての大人が「次の社会をともに創る人」、「若者の未来を創る人」であるという思いを込めました。

ツクルヒトの原点は、学校現場で出会った生徒たちの姿です。やる気はある。でも、自分の興味に合った探究テーマに出会えていない。社会とつながる体験がない。そんな彼らの“まだ見ぬ可能性”に光を当てたい。ならば、社会の側から扉を開いていく必要がある。そう考えたのです。

ツクルヒトでは、企業・NPOや自治体、地域団体などと連携し、生徒たちがリアルな課題に触れ、社会の中で挑戦できる探究の場を提供します。単なるプログラム提供ではなく、学校・地域・社会が一体となった“共創のエコシステム”を目指しています。

中高生の可能性を拓くには「地域×教育」の連携が必要

子どもたちは、すでに心の奥に“未来のタネ”を持っています。ただ、それに気づく機会が不足しているのです。

ツクルヒトでは「早期の気づき」と「継続的な挑戦」の両方を大切にしています。中学生の段階で、多様な探究体験に触れることで、自分の興味関心を言語化し、将来の方向性を考える種をまく。そして高校生では、そのタネを育てるように、自らプロジェクトを立ち上げ、トライ&エラーを繰り返しながら力を伸ばしていく。

この過程を通じて、単なる“優等生”ではなく、「自分の人生を自分で切り拓ける人材」が育っていくと信じています。

社会課題に挑戦することは、生徒にとって“人生の予行演習”でもあります。正解のない問いに向き合い、失敗しながら考え抜く。その経験が、どんな時代にも通用する「生きる力」になると確信しています。

教育と地域をつなぐ新しい学びのモデル:ツクルヒトのビジョン

ツクルヒトが目指しているのは、単なる“プログラム提供者”ではありません。
私が創ろうとしているのは、「教育×地域×社会」が有機的につながり、生徒も大人も共に学び合う“共創のエコシステム”です。

この仕組みの中では、学校は社会と連携する教育の拠点となり、生徒は実際の課題に挑戦する当事者となります。企業は未来の人材と出会い、自治体は若者の声を地域づくりに活かす。NPOや地域団体はプロジェクトの伴走者となり、社会全体で次世代を育てていく。そんな循環を、北海道・旭川市・上川管内から広げていきたいと考えています。

このビジョンを実現するには、個別の学校や先生の努力だけでは限界があります。だからこそ、ツクルヒトが“中間支援”として存在し、学校外の専門性やネットワークを持ち込み、探究の質と広がりを高める役割を担います。

ツクルヒトの強みは、現場のリアルを理解した上で、地域と教育を本質的に結びつけられること。教育現場に根差し、地域に根差すからこそ、表面的な連携ではなく、持続可能で意味のあるつながりを築けると信じています。

5年後には、北海道全域で100校以上の生徒が参加し、100件を超える地域課題解決プロジェクトが生まれることを目指しています。そしてその先には、日本全国にこのモデルを広げ、「誰もが自分の可能性に出会える社会」を実現したいと考えています。

学校の外にこそ、生徒の可能性を育てる環境がある

私は、教育の現場で出会ってきた多くの生徒たちの中に、まだ本人すら気づいていない「可能性の芽」があることを確信しています。

その芽は、正しく光が当たり、水が与えられれば、必ず育ち、花を咲かせます。

しかし、今の学校教育だけでは、その環境を十分に用意することは難しい。だからこそ、「ツクルヒト」は、その光となり、水となり、土を耕す存在でありたいと願っています。

生徒が自分自身の興味関心を見つけ、それを深め、社会とつながりながら挑戦できる場をつくる。
その過程で、大人たちもまた気づかされ、変わり、地域そのものが豊かになっていく。
それが、私が「ツクルヒト」に込めた想いであり、実現したい未来です。

この挑戦は、決して私ひとりで成し遂げられるものではありません。学校、企業、自治体、地域の皆さんと共に、一人ひとりの可能性に光を当てていく営みです。

「まだ見ぬ可能性」にこそ、社会を変える力が宿っている。
だからこそ、私は今日も、新たな“ツクルヒト”と出会い、共に未来をつくっていきたいと思っています。

💬「探究学習を、もっと意味あるものに変えたい」と感じた先生へ

生徒の可能性を引き出す探究の仕組み、学校だけで抱え込まずに一緒につくりませんか?
ツクルヒトでは、カリキュラム共創や外部連携の伴走支援を行っています。

🌱「教育×地域」に関心のある企業・団体の皆さまへ

ツクルヒトでは、地域課題と教育現場をつなぐパートナーを募集しています。
CSR、若手人材確保・育成、地域貢献にご興味のある方は、ぜひ一度お話ししましょう。

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