「総合的な探究の時間」が高校で必修化され、全国の学校で“探究学習”の取り組みが広がっています。けれど実際には、「学校の中だけで完結する学び」になってしまっている現場も少なくありません。本当に大切なのは、生徒が社会のリアルな課題に触れ、自ら考え、動く体験を通して「自分の可能性」に気づくこと。そのためには、学校だけでなく、地域全体が“学びのフィールド”になる必要があります。
そんな新しい学びを実現しようとしているのが、北海道旭川市を拠点に活動を始めた教育事業「ツクルヒト」。探究学習の本質を深く理解し、企業や自治体、NPOと連携しながら、生徒一人ひとりが“挑戦者”として活躍できる場をつくっています。
本記事では、探究学習の課題と可能性、そして「ツクルヒト」が生み出す教育×地域共創の仕組みについて詳しく紹介します。
探究学習とは?その本質と課題
探究学習とは、一人ひとりの生徒が「自分で問いを立て、その答えを自分なりに探し、他者と協働しながら社会とつながる力を育てる学び」です。2022年度から高校で必修化された「総合的な探究の時間」は、文部科学省が示す教育改革の中心でもあり、知識の暗記型学習から、課題解決・創造型学習への転換が求められています。
しかし、現場では理想と現実のギャップが浮き彫りになっています。学校現場の多くは時間や人手、ノウハウの不足に悩まされ、せっかくの探究も「形だけ」「調べ学習止まり」になってしまうことが少なくありません。生徒が本気で取り組めるテーマを見つけることができず、「やらされ感」が先行してしまうケースもあります。
また、社会との接点が不足していることも大きな課題です。探究の本質は、教室を出て“本物の課題”と向き合うことにあります。地域課題や企業のリアルな問題と出会い、試行錯誤しながら答えのない問いに取り組むプロセスを通じてこそ、生徒は「自分ごと」として深く学び、成長できます。
つまり、本当の意味での探究学習を成立させるためには、学校の外との連携=地域・企業・自治体との協働が不可欠なのです。ここにこそ、「ツクルヒト」が果たすべき役割があります。
「ツクルヒト」が目指す世界:教育×地域共創のエコシステム
「ツクルヒト」は、旭川市・上川管内を中心に、学校・企業・自治体・NPOなど地域のあらゆる主体と連携しながら、探究学習を社会に“ひらく”仕組みを構築している教育共創事業です。キーワードは、“まだ見ぬ可能性を切り拓く”。これは、生徒だけでなく地域そのものの未来を拓くという意味も込められています。
ツクルヒトが目指しているのは、教育を地域づくりの中心に据えた「共創のエコシステム」。中高生が地域や社会のリアルな課題に取り組み、企業は次世代の価値観やアイデアに触れる機会を得る。自治体は若者の声を政策やまちづくりに活かす。このように、探究学習を通じて“生徒×社会”が相互に学び合い、価値を生み出す循環をつくるのがツクルヒトの本質です。
例えば、生徒が地域企業のプロジェクトに参加して課題解決に挑戦したり、自治体と共に地域資源を活かした新しいまちづくりを考えたり。そこには「正解」ではなく、「意味のある問い」と「共に悩む仲間」がいます。
このような体験を通じて生徒は、教室だけでは得られない「実践知」や「自分の可能性」に出会います。同時に、企業や自治体にとっても、若者の視点は新しいアイデアの源泉となり、地域の未来像を共に描くパートナーとなるのです。
ツクルヒトは、こうした多層的な連携を支えるオンラインプラットフォームや研修体制も整備し、教育と地域が本質的につながる新しいモデルを提案しています。
こんなプロジェクトが動きだす!
🏘️ 空き家問題×まちづくり×高校生
旭川市内の高校生たちが、地域の空き家を活用したコミュニティスペースづくりに挑戦。地元不動産会社や市役所と連携し、「若者にとって使いやすい空間とは何か?」を議論しながら、提案とプレゼンを行います。
🛍️ 商店街活性×PR×中学生×大学生
中学生と大学生がタッグを組み、地元商店街の課題解決に挑むフィールドワーク。商店主へのインタビューを通じて、プロモーション企画や店頭ポップを作成します。
🍰 食品開発×企業×サステナビリティ
地域食品メーカーと高校生が協働し、「規格外農産物を使った新商品開発プロジェクト」を実施。マーケティングや価格設定まで生徒主導で行います。
探究を“本物”にする3つの仕組み(ツクルヒトの強み)
- 地域密着ネットワーク:教育・産業・行政を巻き込む広域連携体制
- オンラインプラットフォーム:マッチング、進捗管理、成果共有がリアルタイムで可能
- 持続可能なモデル:学校は無料、企業・自治体とのスポンサー契約で収益構造を確保
保護者・先生・企業・自治体にできること
子どもたちの可能性を引き出すために、保護者は応援者として、先生は伴走者として、企業や自治体はパートナーとして、それぞれの立場で関われます。教育を“自分ごと”として捉えることが、地域の未来をつくる一歩です。
まとめ:すべての子どもに“可能性に気づく機会”を
私たちは、子どもたちに「夢を持て」と言います。でも本当は、夢の“素材”に出会う機会が足りていないのかもしれません。ツクルヒトはその“出会いの場”を提供するために、地域とともに学びの仕組みをアップデートし続けます。
あなたも、この探究の輪に加わりませんか?「まだ気づかれていない可能性」に、いち早く光をあてる存在として。
コメント